YWCA情報

ニュースアーカイブス 2011年7-8月

エンパワーするNGO 日本YWCA~women leading change世界YWCA総会 本会議
2012年-2015年のビジョンを描く
(2011年7月19日)

世界YWCA総会の後半は3日間にわたる本会議です。1総会期4年間の組織計画や予算を決め、会則改正案について協議・決議し、世界レベルでYWCAを牽引する会長以下運営委員といった組織のリーダーたちを選挙により選出します。

YWCAは地域的な公平さを確保するため、全世界をアフリカ、ヨーロッパ、アジア、ラテンアメリカ、北アメリカ、太平洋、中東、カリブ海の8つの地域に分け、各地域から候補者を立てます。
選挙の結果、
次期会長はカリブ海地域選出のデボラ・トーマス (トリニダード・トバゴYWCA会員、2008-2011年世界YWCA副会長)が、会計には北アメリカ地域選出のキャロライン・フラワーズ (アメリカYWCA会員、2008-2011年世界YWCA運営委員)が選ばれ、
6名の副会長はこの4年間世界YWCA会長を務めたスーザン・ブレナン(太平洋地域選出、オーストラリアYWCA会員)、同じくこの4年間副会長を務めたジェシカ・ノットウェル(北アメリカ地域選出、カナダYWCA会員)を筆頭に、アフリカ、ヨーロッパ、ラテンアメリカ、カリブ海地域から4名の20代の副会長が選出されました。
このほか、ハイチとアメリカ領バージン諸島の2つのYWCAの新規加盟と、準加盟だったベリーズとルワンダYWCAの正式加盟が全会一致で承認されました。

 

本会議では、2012年から2015年まで向こう4年間の組織計画のほか、国連ミレニアム開発目標達成の期限である2015年以降2035年までの20年間のYWCAの将来像や目的についても、全体会と小さなグループでの分科会で話し合い、参加者の意見を吸い上げ、計画に盛りこんでいく作業をしました。その結果、世代間の女性のリーダーシップ、女性の人権、運動の構築と適切な組織管理(グッドガバナンス)の3つの切り口で、YWCAのさまざまな活動を展開していくことが決まりました。

日本YWCAは本会議で、東京電力福島第一原発事故後の放射能被害について世界のYWCAメンバーに伝えるため、いくつかの準備をしてきました。その1つとして、“Tools for a Non-Violent Society for Women and Children”と題した参加型のワークショップを主催し、のべ50人余りの参加者を迎えました。ワークショップはパワーポイントによる事故の全容と被害状況の説明、参加者のグループディスカッション、参加者が心に描いた思いやアイディアを表現する書道とおりがみのワークで構成しました。

世界各地からの参加者は、原発事故が引き起こした人権侵害を自国のさまざまな問題に重ねあわせたり、女性の性と生殖の権利に関する懸念を述べるなど、もはや一国の問題ではなく世界中の人々、特に女性の人権の侵害と地球環境破壊の問題であるという認識が共有されました

書道とおりがみのワークでは、救済と平和を願う思いを込めて参加者は各々楽しんで創作しました。ワークが終わると、参加者の中から自然に“We Shall Over Come”の合唱がわき起こり、手をつないで輪になって惨状からの救済と克服を祈るように歌声が会場を包みました。

さらに、日本YWCAは本会議の最終日に声明文を発表する機会に恵まれ、特に放射能汚染と女性の性と健康、生存権と性と生殖の権利の侵害の点で発言しました福島の現状とそこから見える事実は世界につながる問題であり、世界中の女性たちが立ち上がって、原発依存の社会から脱して自然エネルギーへシフトしていこう、というメッセージも込めて発言し終わると、参加者が次々と立ち上がり会場全体が張り裂けるような大きな拍手に包まれました

日本で起こった原発事故は、日本の、そして世界の人々、特に女性や子どもたちの人権侵害であり、この現状を変えていく必要性が全世界の女性たちに共有されたことがはっきり示された瞬間でした。YWCAは、国連経済社会理事会の諮問資格を持つ国際NGOであり世界125カ国にネットワークを持つ団体として、原発依存から脱し、核のない社会を世界をあげて作っていく力強い第一歩を踏み出しました。

このほか、韓国YWCAと日本YWCAが共同で提出した、北朝鮮の女性と子どもの人権について訴えた決議案も採択され、北朝鮮の女性と子どもたちの貧困からの救済と、北朝鮮を脱して難民となった人々の人道支援に、世界のYWCAで取り組むことが決まりました。

さて、本会議では地域別の会議も開催され、8つの地域区分の中で最も多様性に富むアジア地域はエネルギーに満ち、政治レベルではさまざまな葛藤がある中でそれを市民レベルで克服して進んで行く前向きな連帯感が感じられました。

21世紀はアジアの時代だと言われます。次の世界YWCA総会は、2015年、タイで開催されます。

エンパワーするNGO 日本YWCA~women leading change人権を推進する若い女性リーダーを讃える:
メアリー・ロビンソン賞初代受賞者決定
(2011年7月16日)

人権分野で多大な影響と実績を持つメアリー・ロビンソンの名を冠して、若い女性の人権を促進する働きを讃えるメアリー・ロビンソン賞が今総会初めて設置されました。

この賞は国連人権理事会とアフリカ女性開発基金がサポートしています。リーダーシップとは必ずしも国の政治や経済のトップリーダーになるということではなく、YWCAは日々の生活やコミュニティの中で意義ある働きをしている一人ひとりの女性たちがリーダーなのだ、という姿勢に立ち、その働きを認識し広めています。

 


世界各地からのたくさんのエントリーの中から、ザンビアYWCAとケニアYWCAの若い女性会員、そしてベリーズYWCAが、HIVおよびAIDSと貧困や教育の問題への取り組みで初代メアリー・ロビンソン賞を獲得しました。また、カナダYWCAは世代・人種・文化の多様性に富んだ、女性のリーダーシップ促進の分野で受賞しました。

エンパワーするNGO 日本YWCA~women leading change国際女性サミット(IWS)7月12日・13日報告(2011年7月16日)

世界YWCA総会では、本会議のほか、国際女性サミット(以下、IWS)という公開イベントが開催されます。IWSでは、世界で共通して顕著な女性に関わる問題を、一国、一地域の課題としてではなく世界の女性の問題として受け止め、具体的な解決策や解決に向けた実践を共有します。世界YWCAはこの会議で導き出された課題をスイス政府代表および国際機関へ提出し、国連ミレニアム開発目標の期限である2015年以降のアジェンダにこれらの課題を取り入れるよう、国連に働きかけて行きます。

    

今回の会議のテーマは「女性が創りだす安全な世界」ですが、一般的に「安全」の解釈は多岐に渡るものです。スーザン・ブレナン世界YWCA会長はIWS開会の言葉の中で、女性にとって安心・安全な場所とは、国や行政が言う女性を安全網に閉じ込めるようないわゆる安全保障ではなく、女性たち自らが私的な安全を確保できることであると明言しました。また、女性に関する課題に包括的に取り組む国連機関として2010年に発足した、UN
ウィメンのミシェル・バチェレ初代最高責任者も開会に駆けつけ、世界中から集まった約1000人の女性たちの前で語りました。


      ミシェル・バチェレさん

IWSは次の4つのテーマのもと、各テーマごとにパネル形式の全体会と参加型の分科会とがセットになって企画されており、参加者は全体会で概要をつかんだ後、分科会で自分の経験やアイディアを積極的に共有することができました。

1.女性が創りだす安全な世界(IWS開会セッション)
2.女性の性と生殖の権利を確実にする
3.女性に対する暴力を撲滅し、正義を実現する
4.女性と少女にとっての安全・安心な場所を要求する

これらのテーマについて、50あまりの分科会が各国YWCAや他のNGO、国連機関によって実施されました。

いくつか紹介すると、テーマ2で実施されていた分科会の1つでは、HIVとAIDSに関する政府レベル(ハイレベル)の国際会議で決定されたことが、私たち生活者である女性の視点ではどれだけ運用されていない/現状にそぐわないものか、ということがディスカッションの結果明らかになりました。国際レベルでの決定を雲の上のものではなく生活レベルへ落としこむためには、国連への働きかけだけでなく、各国政府に対し決定事項の実施を粘り強く・確実に働きかけていくことが必要だということも再認識されました。

テーマ3の全体会では、パネルの1人であるセネガルのNGO、「アフリカ女性の連帯」代表者から、子ども時代に体験したシェラレオネ内戦の暴力的状況が共有されました。戦争が始まる前・戦争時・戦争後はいずれも法も秩序も社会で全く働かないこと、戦争を経験した社会(国)の30%は再び戦争を繰り返していること、戦争を生き残った・暴力をうけた女性たちの多くが差別を受けていること、戦争で多くの男性がいのちを落とす一方、女性はたとえ生き残ったとしても生涯の心の傷と、社会的・経済的負担を一生負うことになること、などの問題が実体験から共有されました。

テーマ4の分科会の1つでは、クリスチャンとムスリムの相互理解と共存を目指して、スイスのキリスト教・イスラム教グループが協働で実施しているプログラムが紹介されました。

2日間のIWSを通して明らかなのは、国際レベル、政府レベルでのさまざまな決定事項や目標を言葉の上で終わらせず、確実に政府が努力するようになるにはどうしたらよいか参加者が積極的に考える場であったこと、また、市民レベルでの実践の成功例を共有する場であったことでした。

IWSのほか、12日からは各国のYWCAや関係NGOがブースを設けて活動紹介や物品販売をする、「KalYdoscope」が始まりました。

日本YWCAは、「平和+もったいない=女性が創りだす安全な世界」をブース展示のテーマに、3月11日の地震・津波、そして今も続く東京電力福島第一原発事故を受けて、日本のYWCA全体で行っている支援活動の報告、特に原発事故に関する現状報告と、沖縄の米軍基地の問題、平和を訴えるさまざまな手作り品の展示・販売をしました。脱原発を訴える1000万人署名には、ブースに足をとめる人たちが次々と名前を連ねていき、原発事故は最初から日本だけの問題ではなく、ずっと、今も、世界・地球に関わる問題であることが世界各地の多くの女性たちの関心の高さからも明らかでした。

12日はさらに、「スイスナイト」と称して、今年の会議のホスト国スイスの紹介やヨーデルのフォーマンスを見て聞いて楽しむ、ディナー交流会が開催されました。スイスの紹介の1コマでは、しっかりと、「スイスは原子力発電に反対しました」と打ち出していたのが頼もしく、日本YWCAからの参加者の心の中に希望をもたらしました。

14日から16日は、いよいよ本会議です。2012年-2015年の組織とプログラム計画の検討と決定のほか、国連ミレニアム開発目標達成期限の2015年から2035年の20年間の計画や目標も話し合われます。

エンパワーするNGO 日本YWCA~women leading change第27回世界YWCA総会「女性が創りだす安全な世界」開幕!! (2011年7月13日)

世界125カ国に広がりをもつYWCAの4年に1度の総会が、7月11日、スイスのチューリッヒで始まりました(会期7/11~16)。全世界から1000人を超える女性たちが集まり、日本の全国のYWCAからは18人が参加しています。


                    オリエンテーション
総会では、全世界のYWCAとして推進する共通の課題について話し合い、決定するほか、次の総会までの4年間の予算やプログラムの計画立てをします。国や地域の数だけ異なる課題がありますが、それら全ては女性たちがリーダーシップを発揮し、女性たち自身の人権や生活の状況を改善するという共通の目的で繋がっています。

日本のYWCAからは、特に次の2つの課題をこの総会の場で全世界のYWCAと共有し、一緒に取り組んでいけるよう準備して臨んでいます。1つ目は、韓国YWCAと一緒に総会へ提出する、北朝鮮の女性と子どもたちの人権、救済、生活状況の改善を求める総会決議案です。そしてもう1つは、東京電力福島第一原子力発電所事故を受けて、世界と今一度脱原発について共有するというものです。日本YWCAはこれまでも何度となく、世界へ向けても原子力の利用について警告を鳴らしてきました。総会開幕に先立つ10日、日本YWCAのメンバーは、旧ソビエト連邦時代にチェルノブイリ原子力発電所事故を経験したウクライナYWCAと、原発利用の危険および原子力エネルギーから自然エネルギーへのシフトを世界中のYWCAへ呼びかける必要性を話し合いました。

今日、11日のプログラムでは、30歳以下の参加者を対象とした「若い女性のリーダーシップダイアログ」(交流と、意見・アイディア・経験の共有)と「運動構築とリーダーシップのプレ総会」と題した2つのプログラムが2つの会場で同時に行われました。前者には、全世界から約200人の若い女性たちが集い、特に世界的に重要な課題である性と生殖に関する健康と権利(SRHR)、若い女性のリーダーシップ、そして今年の国連女性の地位委員会(CSW)のテーマとも関連するテクノロジーと女性の権利についてそれぞれの考えや実践を分かち合いました。

また、後者のプログラムでは、世代間リーダーシップ(さまざまな世代が相互によい影響を与えながら発揮するリーダーシップ)と変化型リーダーシップ(一つのリーダーシップの型にとらわれず、状況や課題の進展に応じて手法や形式を変えていくリーダーシップ)による運動構築、人権に基づいたアプローチでの運動構築、組織の強化、という3つの大きなテーマで分科会が開かれました。世代間・変化型リーダーシップによる運動構築の分科会の1つのセッションでは、日本YWCAが日韓間の課題解決と題したテーマを与えられ、日本YWCAが韓国YWCAとの協働プログラムを紹介しながら参加型のワークショップを行いました

これらの11日のプログラムで導きだされた結果は、後に続く本総会で話し合われる世界YWCAの向こう4年間の組織・活動計画に反映されていきます。世界125カ国からの参加者の声が、まさに世界のYWCAの声となっていくのです。

    
世界YWCA総会開会礼拝@フラウンミュンスター大聖堂

最後に、この日の夜は、マーク・シャガールが制作したステンドグラスで有名な、フラウンミュンスター大聖堂で開会礼拝を行いました。フラウンミュンスターは「女性の教会」とも呼ばれ、世界の女性の祭典である世界YWCA総会を始めるにふさわしい場です。優しいアーチ型の高い天井に響き渡る穏やかなクワイヤの歌声に、言葉も文化も背景も異なる1000人を超える参加者が声をあわせ、圧倒的な力強いパイプオルガンの響きに活力を得、第27回世界YWCA総会が開幕しました。

 
 思い思いの民族衣装を着た参加者     総会を裏で支えるのは赤Tシャツのボランティアさんたち


次のレポートは、12日・13日に行われる国際女性サミット(IWS)をお届けします。

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