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【開催報告】平和はぬくもりと希望を伝える〜敗戦80年の「南京を考える旅(和平传递温暖与希望)」

敗戦80年という大きな節目の年となった2025年9月。日本各地から14人、中国全土から集まったYWCA/YMCAのスタッフ約30人とボランティアを含めた60人近くが南京の地に集結しました。

国境を越えて集まった私たちが旅を通してどんな「ぬくもり」に触れ、どのように「希望」を見つけたのか。4日間の旅の全貌をレポートします。


9月21日(1日目):言葉はいらない!?熱気あふれる出会い

オリエンテーション

南京に到着した初日の夜。 まだ緊張気味の参加者たちを待っていたのは、言葉の壁をとっぱらう「自己紹介ビンゴ」!日本語、中国語、英語に加えて必死のボディランゲージ。目の前の相手に「とにかく伝えたい!」という熱意で、会場はすぐに活気に包まれ、参加者どうしで打ち解けることができました。

そして、この夜には心温まるサプライズも。 9月生まれの参加者たちを、みんなでお祝いしました!

ケーキを囲んで、日本語、中国語、それぞれの言語で歌う「ハッピーバースデー」を合唱。 メロディーは同じでも、異なる歌詞の歌声が重なり合う、心温まる時間でした。


9月22日(2日目):南京の街で「ぬくもり(温暖)」に触れる

開会式/基調講演/グループ別フィールドワーク(福祉施設訪問)/特別講演

3つのグループに分かれ、南京YWCAが運営する福祉施設を訪れました。

  • グループ1:南京YWCA華僑慈恩障害者の家
  • グループ2:愛徳パン工房(アミティベーカリー)
  • グループ3:愛徳・好来屋(コミュニティ在宅高齢者サービスセンター)

💬 参加者の声 「高齢者センターで出会ったおばあちゃんたちに『また来てね』と手を握られて、嬉しかった。言葉は通じなくても、心の距離が縮まるのを感じました」

夜は南京師範大学副学長の張連紅教授による特別講演が行われました。

テーマは「歴史と平和」。南京という街について、南京大虐殺の概要、さらにサバイバーや現代を生きる人々にとって、トラウマとしてどのように残り影響を与え続けているのかを話していただきました。

💬 参加者の声 「『和解は、真実と向き合ったうえでしか成し遂げられない』という言葉が印象に残りました」


9月23日(3日目):歴史を知り、「希望」を紡ぐ

南京大虐殺の史実展(侵華日軍南京大屠殺遇難同胞紀念館)・式典/慰安所旧跡陳列館(南京利济巷慰安所旧跡陳列館)/「ジョン・ラーベ旧居/南京国際安全区記念館

前日に出会った人々のぬくもりを胸に、3日目は歴史の現場へ。この旅の真髄に触れる一日です。 戦後80年、今にも続く過去の痛みに向き合いました。アートや展示が訴えかける力に圧倒されながら、史実と向き合いました。

午前中は紀念館での式典に参列し館内を見学しました。ガイドの方の「ここは犠牲者を追悼するための場所です。そのため『犠牲者紀念館』と呼びたい」という説明が印象に残りました。館内には初めて目にする写真や証言、犠牲者の遺品、当時使われていた物などが展示されていました。資料や遺品は、かつてここに確かに生きていた方々の存在を、私たちに静かに、強く訴えかけてきました。

午後は「ジョン・ラーベ旧居/南京国際安全区記念館」へ。 当時の極限状態のなかで、国籍を超えて市民を守ろうと尽力した人々がいた事実を知り、人間の尊厳について考えさせられました。

その後、「南京利済巷(りさいこう)慰安所旧址陳列館」を見学しました。多くの女性が自由と尊厳を奪われた場所に立ち、彼女たちを想いました。これは決して過去のできごとではなく、現在にも続く非人道的な暴力であることを改めて感じました。悔しさや怒り、申し訳なさ…様々な感情が込みあげ、涙が止まりませんでした。

痛ましい史実に向き合うことは、辛く苦しさを伴います。しかし、過去を正しく知り向き合うことは、未来への「希望」を作ることでもあると考えます。

💬 参加者の声

  • 「慰安所陳列館で、『流不尽的泪(尽きることのない涙)』という像を見ました。思わず足がすくみました」
  • 「紀念館にあったメッセージ『铭记历史,但不带仇恨。(歴史をしっかりと銘記しなければならないが、恨みは記憶すべきでない)』この言葉をどう受け止めるか、今も自分の中で問い続けています」
  • 「過去のことだと思っていたけれど、被害者や遺族の苦しみは今も続いていると実感しました」
  • 「空爆で子どもを失った親の嘆きを知り、今のガザ地区の状況と重なって見えました。人間の行う非人道的な行為の普遍性を感じて辛かった」
  • 「展示を見進めるうち、一人の女性として、悲しみだけでなく、強い怒りがこみ上げてきました。日帝が設置したこの場所で、女性たちの尊厳が踏みにじられていたこと。その事実に涙が止まらず、悔しくてたまりませんでした」

答えは簡単に出ないかもしれません。しかし、生まれた問いやもやもやを持ち帰ることも、この旅の目的のひとつです。


9月24日(4日目):平和を「伝える(传递)」ために

グループ別シェア/平和行動計画発表

最終日はこれまで学んだこと、感じたことを自分たちの言葉で語り、聴きあう「対話」を深める時間です。 日中の参加者、そしてユースとシニアが車座になり、本音で語り合いました。

「謝るというのは、ものすごいエネルギーがいると気づいた」
「自らのなかにも、無意識の差別心があることに気づきハッとさせられた」

きれいごとだけではない、痛みや迷いも含めた対話。 そして、その議論の先にグループごとに考えた平和へのアクションプランが生まれました。

また、日本YWCAからの参加者は、個人でできるアクションプランも出し合いました。

  • 「帰国後、ドキュメンタリー映画の制作と上映会を続ける」
  • 「食とジェンダーという身近な視点から、無関心層に届くアプローチを実践する」
  • 「まずは自分の心を平和にして、周囲に対話を広げていく」

一人ひとりが、自分なりの「平和への一歩」を見つけ出しました。


💬 参加者の声
歴史に真剣に向き合う仲間が、日本にも中国にもいる。その出会いが、私にとって一番の希望になりました。


おわりに:バトンは私たちに

4泊5日の旅を終え、参加者たちはそれぞれの地へ戻りました。

「南京」という言葉を聞いた時、あなたは何を感じますか?

この旅に参加し、悲しい歴史の記憶とともに、そこで出会った人々の笑顔や、街の温かさを思い出します。参加者の1人は「紙だけの情報では分からないことがたくさんある。一度行くと、その場所がぐっと身近に感じる」と語りました。

「知る」ことは、平和への第一歩

南京で出会った人々の笑顔、紀念館の静けさ、そして生まれた数々のアクションプラン。「平和をつくる」とは、一見広大なテーマですが、それは何か大きなことを成し遂げることだけではないと思います。ZINEを作ったり、動画を撮ったり、隣の人と話したり。

あなたなら、どんなアクションを起こしますか? このレポートを読んでくれたあなたと、いつかこの旅で出会えることを楽しみにしています!

(担当スタッフY・T)

閉会式では日本語・中国語でうたえる歌を合唱♪

スマホライトを使い、ライブ会場さながらに盛り上がりました!


主催: 中国YWCA・日本YWCA
協力: 南京YWCA

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