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世界のニュースから ケニアYWCA―女性性器切除(FGM)に立ち向かう

25Feb.

世界のニュースから
ケニアYWCA―女性性器切除(FGM)に立ち向かう


世界YWCAウェブサイト(http://www.worldywca.org(英文))では、スイスにある世界YWCA本部や、120ヵ国以上にある各YWCAの活動を紹介しています。今回は、ケニアYWCAの活動に関する記事の日本語訳をお届けします。

現在、世界でおよそ1億4,000万人の少女や女性が女性性器切除(FGM: Female Genital Mutilation)を受けています。若い女性や少女はFGMや幼児婚など有害な伝統的慣習にさらされることが非常に多く、そのことが妊産婦死亡率や出産時外傷、HIV感染、ドメスティック・バイオレンス(DV)などのリスクを高めています。アフリカだけでも10歳以上の少女約9,200万人がFGMを受けたとみられます(2012年 世界保健機関(WHO)より)。

こうした人権侵害に対して、ケニアYWCAはFGMがもたらす命にかかわる後遺症について意識を高めることで全力で取り組んでいます。世界YWCAの「変革への力基金」の資金援助およびデイビッド&ルシール・パッカード財団の支援を受け、ケニアYWCAはFGMのリスクが高い州を特定し、教師のサポートを得て学校内で若い人々を結集するピア・エデュケーション(同じ状況にある人の間で教育・トレーニングをおこなう)プログラムを実施しました。若者を団結させ、セクシャリティについて彼女・彼らと話し合ったり情報を広める場をつくるには、トーナメント方式のスポーツや劇など創造的な方法が最も効果的だとわかりました。

ケニア人口保健調査(2008/2009)によれば、ケニアでHIV感染率が一番高いのはニャンザ州の14%で、中でも若い女性の感染率は11%と最も高く、若い男性は3%となっています。また、FGMの実施率が最も高いのは同州のキシイ県で96%に上ることも報告されました。FGMは性行動や早婚とも関連しています。同州でHIV感染率が高い理由として、FGMのほか、幼児売買春や他の有害な文化的慣習が報告されています。他の有害な文化的慣習には、妻の相続(兄弟が死亡した時その妻を引き取る)、性的浄化儀式(死亡した夫の霊を妻の体から取り除くための性的儀式)、性と生殖に関する健康および家族計画に関するタブーや間違った思い込みなどがあります。ニャンザ州では若い女性がこのような高いリスクにさらされており、ピア・エデュケーション・プログラムをこの州で実施することは絶対必要でした。

ニャンザ州のプログラムは、YWCAが提供する安全な場で若い女性が性や生殖に関する健康や権利についての心配や不安を自由に話し合うことを支援しています。また、プログラムでは若い女性が自分の権利、とくに性的暴力に対処する権利を理解するためのトレーニングもおこなっています。性的暴力は文化的慣習や間違った思い込みによって引き起こされる大きな問題となっているからです。

ピア・エデュケーション・プログラムでは、ケニアYWCAのピア・エデュケーター、ケジア・ビアンカがFGMのサバイバーとして自分の体験を勇気をもって語りました。「FGMは少女が生まれながらにして授かっている体に悪影響を与える非人間的行為です。同じ若い女性として、私は少女たちをこうした行為から守る責任があると確信しています。このような有害な慣習の廃絶と平等な社会規範の推進を目指して、プログラムや学校では少女に対する固定概念を変えなければなりません。そのために、少女たちが小さい頃からこの問題に取り組む必要があります。暴力を受けずに生きることは基本的な人権であるという事実を男性も女性も知らされるべきです。そして、悪意はなくてもFGMを娘の結婚準備と考える親はそうした考えを改め、FGMは少女の権利の侵害であると理解しなければなりません」

ケニアYWCAのキシイ支部では、10歳以上の少女を対象にしたプログラムで、FGMとは別の通過儀礼を選ぶ権利や少女や若い女性としての権利についての研修もおこなっています。研修が終了すると、彼女たちは卒業し修了書を授与されます。割礼を受けたと見なされますが教育を継続して受ける道が開かれている、人生のそんな段階を通過したことを示す証書です。また、親や割礼師に対してもFGMがおよぼす影響やFGMに関する法律についての研修がおこなわれます。多くの割礼師は少女に割礼をおこなうことが生計を立てる唯一の手段であるため、仕事に結びつくスキルの訓練を受けたり割礼に代わる別の収入を得る方法を学びます。

最後にビアンカはこう語りました。
「FGMを体験した少女として、私には未来があり人生の目的があると信じています。FGMを受けたすべての少女たちへの私からのアドバイスは、苦難の先には希望の光があるということです。人生は続くのです。私がFGMを受けたのはまだ15歳の時でした。FGMの危険についてコミュニティの人たちを啓発する夢を持っていました。そして、少女の権利が侵害された時、それがどんな気持ちかを実際自分で伝えたいと思っていました。FGMについて率直に話し合い、少女の権利のために立ち上がりましょう」

アフリカの8つのYWCAはSRHR(性と生殖に関する健康と権利)プロジェクトを実施しており、ケニアYWCAもこれに参加しています。このプロジェクトは、デイビッド&ルシール・パッカード財団の資金援助による「SRHRに関する若い女性のリーダーシップの結集および投資」という特別な取り組みの一環です。これらのプロジェクトは、若い女性全体のために主張する擁護者として若い女性をエンパワーし、性と生殖に関する健康について十分な情報を得た上で決定するための正しい情報を得られるようにするものです。

原文:世界YWCAウェブサイト記事(2013年1月14日掲載)
http://www.worldywca.org/YWCA-News/World-YWCA-and-Member-Associations-News/The-YWCA-of-Kenya-Tackling-FGM
編集責任:日本YWCA
翻訳協力:日本YWCAコモン・コンサーン翻訳グループ(浅原由美・宇山智美・黒木聖司・小泉延枝・古賀佳子・今野菊代・芝田貞子・林加奈・宮坂浩美・山高万寿子・横山雅代・吉田亜希)

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