パレスチナYWCAからの支援要請
ヨルダン川西岸地区で活動するパレスチナYWCAは、難民キャンプに住む女性たちの就業支援や子どもたちのための幼稚園運営、また若い女性たちのエンパワメントのためのリーダーシップ・トレーニングに長年携わってきました。厳しさを増す情勢の中、同団体より届いた支援要請のメッセージをお届けします。
共にレジリエンスを築く:YWCAの支援要請
概括
パレスチナYWCAは、全国的なメンバーシップに基づく女性団体として現地でNGO登録されています。同時に100カ国以上で女性・若い女性・少女のエンパワメントに取り組むグローバルな運動として国連経済社会理事会(ECOSOC)へ特別協議資格を有する世界YWCAに加盟しています。
1893年、ヤッファとエルサレムのキリスト教女性による非公式な集まりから始まり、1918年にエルサレムで正式に設立されました。現在、パレスチナYWCAはエルサレム、ラマッラー、ジェリコ、ベツレヘムの4つの地域YWCAと、ジャラゾン難民キャンプおよびアクバット・ジャベル難民キャンプの2つの多目的コミュニティセンターで構成されています。計画・方策の調整、年次計画・予算執行の監督、資金調達、アドボカシー、外部評価の促進において重要な役割を果たし、また地域YWCAへの技術支援を担っています。
豊かな歴史と女性のエンパワメントへの揺るぎない姿勢を持つパレスチナYWCAは、世界YWCA運動の中で強力なプレゼンスを発揮するダイナミックな組織です。私たちの活動は、以下の重点分野を通じて女性の権利と福祉の増進を中心に据えています。
- 女性の経済的エンパワメント
パレスチナYWCAは、女性たちが経済的自立を獲得し経済発展に貢献できるよう、職業訓練センター・ビジネス支援・女性協同組合を通じて、必要な知識・スキル・リソース・機会を提供しています。 - ユース・リーダーシップと市民参加
若者を変革の担い手として位置づけ、権利・ジェンダーに基づく暴力への意識向上、リーダーシップ・ロビイングスキルの育成を行います。 - 平和と正義
若者の平和構築への参加を推進し、紛争の公正かつ公平な解決を目指します。
背景
パレスチナの状況は、エデュサイド(教育の組織的破壊)、縮小する市民社会空間、経済的分断によって特徴づけられています。国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、軍事作戦と制限強化により病院・学校・エネルギー・水・交通インフラが壊滅し、20年以上の経済的進歩がわずか15カ月で失われました。2024年には、被占領パレスチナ地域(OPT)全体のGDPが前年比27%減少、失業率は全体で50%、ガザ地区では80%に達し、ガザ住民全員が貧困ライン以下に追い込まれました。ガザ地区の経済は2022年比でわずか13.3%まで縮小し、一人当たり実質GDPは161ドルまで落ち込みました。ヨルダン川西岸地区では1972年の統計開始以来最悪の経済後退が記録され、所得水準は2008年並みに逆戻りしています。さらに、イスラエルはパレスチナの公的歳入の3分の2以上を管理・差し押さえており、パレスチナ政府は特に医療分野で持続不可能な借り入れと未払いの蓄積を余儀なくされています。また、国連の人権専門家であるフランチェスカ・アルバネーゼは、占領下のヨルダン川西岸地区におけるイスラエルの土地収用・登録措置の拡大は、国際社会における最高位の司法機関によりすでに違法と判断されている占領をさらに深化させ、差別と永続的な支配を固定化する、恒久的な併合に向けた意図的な措置であると警告しています。
ヨルダン川西岸地区(東エルサレム含む)の教育は、深刻な危機に瀕しています。イスラエルの軍事行動と入植者による暴力が、安全で守られる場としての学校を脅かしています。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)と国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、2023年10月以降学校への攻撃が激化し、大規模な避難、学校閉鎖、学習の中断が続いています。この不安定な状況への適応を強いられた学校は緊急用物資を備蓄し、教師たちは授業だけでなく生徒への心理社会的なサポートをおこなう必要が増加しています。2024/2025年度までに2,000件以上の教育関連事案が記録され、540校以上・数万人の生徒に影響し、学習機会の損失は2.5〜4年分と推計されています。2025年の東エルサレムにおけるUNRWA学校の強制閉鎖や、ヨルダン川西岸地区北部でのコミュニティ全体の避難により、多くの子どもたちは教育へのアクセスを失っています。障がいのある子どもたち、移動の制限と安全性のリスクが高まる少女たち、逮捕・拘禁にさらされる少年たちが特に深刻な影響を受けており、既存の不平等をさらに拡大しています。教員が殺害・負傷・トラウマを負う中、教育システムは深刻な人材不足と補修教育・回復のためのコストの急増に直面しています。こうした状況は、教育への攻撃の即時停止と継続的な国際支援なしには、学習の回復、教育の継続性、子どもたちの教育を受ける権利の保護が極めて危うい状態にあることを示しています。
パレスチナYWCAは、130年の地域での実績と国連経済社会理事会(UN ECOSOC)協議資格を活かし、厳しい環境下で大きな効果をもたらす5つの道筋を提案します。
パレスチナYWCAが提案する、前向きな影響への道筋(パスウェイ)
パスウェイ1:子どもとコミュニティのための安全な場所(セーフスペース)
パレスチナの子どもたちは、何年にもわたり教育の阻害を受けてきました。季節ごとのキャンプはすでに贅沢な余暇ではありません。必要不可欠な心理社会的ファーストエイド(応急処置)なのです。移動制限により伝統的な公園やコミュニティセンターへのアクセスが制限される中、季節ごとのキャンプは難民キャンプ(ジャラゾン、アクバット・ジャベル)や疎外されたコミュニティにとって唯一の構造的な「セーフスペース」となっています。
UNICEF推計によると、ヨルダン川西岸地区とガザ地区の子どもの約90%が深刻なトラウマ症状を抱えています。制限によりこの3年間で市民空間は40%以上縮小しており、子どもたちには自己表現の場がほぼありません。安全な場所(セーフスペース)を提供することは、暴力への青少年の取り込みリスクを低減し、長期的な認知能力の向上にも貢献します。
このパスウェイは、異常な環境の中の子ども時代を「普通の」ものにすることで、レジリエンス(回復力)を育てます。安全が確保された場で地域の母親や若い女性を巻き込むことで、子どもたちのメンタルヘルスに対するコミュニティの主体的な関わりを育み、恒久的な地域力を構築します。
最近ジャラゾン・コミュニティセンターで行われた冬のキャンプの様子

パスウェイ2:ユース主導の平和・レジリエンスイニシアチブ
パレスチナのユースはしばしば、援助の受け身な受益者として扱われます。このパスウェイはそれを逆転させ、彼らを変革の担い手として位置づけます。
18〜29歳の若者は人口の21%を占めており、彼らのリーダーシップへの投資は社会の断絶を防ぐ唯一の手段です。国連の対話プロセス(2025/2026)の調査では、ユース主導のレジリエンスへの1ドルの投資は23〜28ドルのコミュニティ社会資本・経済安定のリターンをもたらすとされています。現在の人道支援資金のうちユース主導組織に直接届くのはわずか1%にすぎず、YWCAパレスチナはこのギャップを埋める重要な橋渡し役を担っています。
若者が自らイニシアチブを設計することで、文化的適合性と持続可能性が高まり、「リーダー」としての自己意識を育み、頭脳流出・大量移住の流れに歯止めをかけます。
パスウェイ3:職業訓練センター(VTC)奨学金
2026年の労働市場は大学卒業生を吸収しきれていません。パレスチナでは女性大学卒業生の失業率が50%を超えていますが(PCBS 2026)、職業訓練卒業生は6ヶ月以内の就職率が学術系卒業生の3倍です。YWCAの職業訓練センターでは、オフィス管理などのスキルを提供します。奨学金の支援により、女性が「経済的な拠りどころ」を得て土地に留まり、家族を支え、地域経済の主体となることができます。
パスウェイ4:コミュニケーション・アドボカシー・広報活動
制限がますます強まる環境の中で、市民社会空間を守り、パレスチナの声を増幅し、説明責任を確保するためには、コミュニケーションとアドボカシーのための持続的な支援が不可欠です。国連人権高等弁務官事務所の記録によると、OPTにおける市民社会・報道・人権活動の空間は深刻に縮小しています。明確なアドボカシー・プランを構築して実行にうつすこと、加えて「女性の地位委員会(CSW)」や「人権理事会(HRC)」などの国際フォーラムへの継続的な参加することで、組織は、グローバルな政策議論に影響を及ぼし、証拠に基づく記録を発信し、国際的な法や人権の基準を守ることができます。このパスウェイは、グローバルな意思決定の場において女性、ユース、扱われている人権課題に直接影響を受けるコミュニティの人々が代表されていることを確保するとともに、活動の現場における現実を信頼性のあるメッセージへと翻訳することで、公的なエンゲージメントを強化します。アドボカシーのための支援はまた、YWCAの組織そのものを支えることになります。それは組織の可視性・正当性・パートナーシップを強化し、資金調達の機会を多様化し、長期的な独立した運営を守ります。
パレスチナYWCAはひとつの運動です。エルサレムから難民キャンプまで広がる活動基盤と130年の歴史が、皆さまのご支援が透明性・技術的卓越性・揺るぎない地域からの信頼をもって活かされることを保証しています。
パスウェイ5:組織コアサポート
YWCAパレスチナは、組織能力強化のため、また女性のエンパワメント、ユースのリーダーシップ、コミュニティ・レジリエンスの推進という使命の持続可能性を確保するため、基幹的支援の資金を求めています。この支援によって私たちは、効果的なプログラム実施と長期的成果の前提となる、主要な内部システムやプロセスに投資することができます。
この資金は、組織のビジョンと優先課題の指針となる計画プロセスや、理事・スタッフのリーダーシップ・組織運用・協働の学びのための研修・リトリートに充当されます。加えて、現在の困難かつ変化の激しい状況の中で、迅速な業務、スタッフの福利、そして組織の安定を支える人事・管理費用に充当されます。
地域に根差す組織がコミュニティのニーズに応え、プログラムを維持し、社会正義、ジェンダー平等、そしてインクルーシブな開発にむけたより広範な取り組みに貢献する上で、このパスウェイを支えてくださるパートナーの皆さまは必要不可欠な存在です。
なぜあなたの支援が重要なのか
皆さまのパートナーシップは、パレスチナYWCAが子どもたちの教育を受ける権利を守り、女性を経済的にエンパワーし、ユースを平和と社会正義のリーダーとして養成することを可能にします。ともにセーフスペースを維持し、コミュニティを強化し、パレスチナ全土にレジリエンスを築きましょう。
パレスチナYWCAを支援して、130年にわたるエンパワメント・インパクト・信頼の歴史に加わってください。
日本YWCA パレスチナ難民支援募金
パレスチナYWCA支援のために、パレスチナ難民支援募金へのご協力をお願いいたします。
銀行振込
三井住友銀行 飯田橋支店 普通 1198743
口座名義:公益財団法人 日本YWCA
フリガナ:コウエキザイダンホウジン ニホンワイダブリューシーエー
ゆうちょ銀行 019支店 当座預金 0023723
口座名義:公益財団法人 日本YWCA
フリガナ:ザイ)ニホンワイダブリューシーエー
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