「上筒井から」Vol.10(July 2001)

空港問題の現状と課題



 神戸空港が着工されて1年余になるが、その間、神戸市から市民に対してなんら新しい説明がなされず、未解決・未解明課題は山積したままであり、市民の疑問や不安は依然として根強いものがある。

1. 工事の進捗度

 海底地盤の改良工事が完了し、目下、空港島の外周護岸の築造工事中で、2001年秋には、護岸がほぼ出来上がり、空港島の輪郭線が海面に現れる予定である(その後、本格的な埋立て工事着手)。
 神戸市は、「神戸空港ニュース」NO22(4月1日発行)で、「平成17年度開港に向けて、埋立て工事が本格化」などど、空港工事の進捗を誇示するかのようなPRがされているため、5月に市民から「神戸空港ニュース」発行費支出の返還を求める住民監査請求が提出されている。
 しかし、最近、神戸空港のかかえる問題点のうち、空域管制と需要予測の問題が、改めて大きくクローズアップされている。

2. 空域管制問題

 大阪湾周辺の限られた範囲に関空、伊丹、神戸三空港がひしめくことになり、飛行経路が過密化することによる危険性はこれまでも「航空安全会議」などからも指摘されていた。国の情報公開を利用して入手した、国土交通省によるシミュレーション調査報告書(2000年5月)によれば、過密化の結果、次のような問題点が明らかになっている。

 ◆飛行機と飛行機との間隔が十分維持し得なくなる。神戸空港出発機では、10分から19分の遅延が出る。
 ◆関空到着機との競合のため、到着機が連続する場合、神戸空港出発機の上昇が困難になる。
 ◆各空港からの出発機が競合する際に、各飛行経路が最終的に特定地点に集中し、高い負荷がかかる。

 現状でさえ過密化している近畿の空域状況に、神戸空港が加わることにより、単に神戸空港の空域問題のみにとどまらず、近畿圏全体の空域・管制に大きな影響を及ぼすことが改めて浮き彫りにされたと言えよう。

3. 需要予測

 本年5月、総務省は「空港整備等に関する行政評価・監視結果報告書」および「勧告」を発表した。これは、全国のすでに供用中、および整備中の空港について、需要予測などが適正かをチェックしたものだが、神戸空港についても、厳しい指摘がされている。
 「他の空港と空港勢力圏が相当程度重複するものと考えられる空港が整備される場合の需要予測における地域内の他空港の需要見込みに係る事例」として、関空、伊丹、神戸の三空港の関係の例が取り上げられている。需要予測が一般に、自空港に関する結果を明らかにするために行われてきたが、神戸空港については、「地域全体の需要見込みは明らかにされていない」ことが指摘されている。
 その他、本報告・勧告では、「需要予測の客観性・透明性を確保するためには、需要予測の結果に至った予測方法が公開される必要がある」として、「部外からの検証が可能となるような内容を記述した記録を保存し、公開することが必要」と指摘されていることが注目される。神戸市では、空港関係の調査資料がおおむね3年の保存期間が過ぎると事務的に廃棄されており、追跡調査が困難になっている。
 なお、6月1日、航空関連労組から構成される「航空連合」が神戸市役所を訪れ、神戸空港の建設凍結を求める要請書を提出している。
 このように、工事はある程度進んでも、神戸空港をめぐる課題は山積し、内外からの疑問・指摘は相次いでいる。市民も、問題点をしっかり把握しておくことが大切だ。10月の市長選挙が、空港問題についての「折り返し点」ともいうべき大きな山場になることは間違いない。

(N. N. 神戸空港を考える会)


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